ディランの絵本『はじまりの日』のとてつもない楽しさ

ボブ・ディラン来日記念のどさくさにまぎれて、このブログも2回連続でディラン関連記事だ。
岩崎書店から出た絵本『はじまりの日』。

実はそれほど期待せず、これはもうボブ・ディランの固定ファン税のひとつ、責務、と思って買った。
勝手に、以下のような本だと思い込んでいたのである。

「ボブ・ディランの名曲『Forever Young(いつまでも若く)』が、アーサー・ビナードさんの日本語訳で素敵な絵本になりました。こどもを持つ方におすすめするのはもちろんですが、この絵本には、若者からおとなまで、世代を超えて読む人すべての魂に訴えかける感動が満ちあふれています」的な感動感動また感動本だと思っていた。

ま、そういう要素が少しはあることも認めつつ、この本は実にいい、すばらしい。
ディランばかは皆、必見必読必携だ。

とにかく絵がいい。
いや、絵を担当したPaul Rogersのこだわりがいい。というか、すごい!

この本の絵、全ページにわたってディランばか度を計れるトリヴィアに満ちており、「あっ、これはあの歌に出て来るあの人やん」「あっ、このフレーズはあの歌やん」と小さく発狂しながらでないと見れないのだ。

脳細胞が人の四分の一しかない俺なんか、最初は「なんか猫がよう出て来るな~」としか思わなかったのだが、巻末のロジャーズ氏の種明かし(明かされるのはごく一部)で「ああっ、猫は猫でもきみはあの猫だったのか」と思い知らされた次第。例のあの歌で、誰かさんが肩に乗っけているあの猫です。

要するに「ディラン検定本」だ、これは。実に楽しい。

例えば表紙に大きく描かれているギターケース。
裏表紙ではネックの部分に、ある歌のとても印象的なフレーズが書き込まれている。
かつて、詩人の故アレン・ギンズバーグも言及していた1行。
ギンズバーグが、はじめて聴いたときに泣いたと告白した歌。

そして、下を走る貨車にはTHE DOUBLE Eの文字!
そう、It Takes a Lot to Laugh, It Takes a Train to Cry (悲しみは果てしなく)なのだ。
後ろの有蓋貨車にいるホーボーはウディ・ガスリーかな。

ネタばらしをもう少し。ふふ。
ジョン・ハモンドやピート・シーガー、ジョーン・バエズなどなどが登場する公園の絵の見開き。
右端に描かれているトラックのボディにFISHとあるが、これはきっとあれだ、Visions of Johanna(ジョアンナのヴィジョン)の歌詞からだ。

トラックの左に立って箒を手にしている女性は、シンデレラじゃないかな、Desolation Row(廃墟の街)の。
あの歌の中で、Cinderella sweeping up on Desolation Rowと歌われているから。

とにかくこういう「くすぐり」に満ちていて飽きない。
例えば、マギーの店のショーウィンドウにはエレキギターが飾られていて、そこに吊るされているシャツの模様はなにか、店のドアの貼り紙にはなんと書かれているか、ディランばかならきっとニヤリとするはずだ。
ちなみに、マギーのおっ母さんは年齢(自称)を示すバッジを胸につけている。

あれはNo Direction Homeの中のシーンだったかな、若き日のディランが楽しそうに唱える言葉遊び。
あのフレーズなんかもちゃんと出て来るからマニアックだ。
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ではここで、ボブ・ディランとカート・ヴォネガットにかかわるトリヴィアをひとつ。

あくまで俺の限りなく頼りない記憶とみみっちい読書体験によればの話ですが、ヴォネガットは自分の小説の中で一度だけボブ・ディランという名前を使ったことがある。
くどいようですがあくまで俺の記憶では、という大前提つきですよ。違っていたらゴメン。

その作品は『ホーカス・ポーカス』。翻訳は少し前の記事でふれた今は亡き浅倉久志さん。
http://yujufudan.at.webry.info/201002/article_2.html

1940年生まれのユージン・デブズ・ハートキというヴェトナム帰りの将校が主人公なのだが、なにせ18年も前に読んだ本なのであらすじはよく覚えていない。いつも腹の皮がよじれちまう男とか刑務所とか・・・

とにかくこの本の20章の終盤にこんなくだりがある。
…歌手のボブ・ディランに似ていた。わたしからすれば、本物のボブ・ディランであっても同じことだった。…





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